平成14年 1月31日

「有機EL用水分ゲッターシート」を開発

ダイニック株式会社(社長 坂部三司、本社・東京都港区芝大門1−3−4(ダイニックビル) 資本金57億95百万円、
東証一部)ではこのたび、他社に先駆けて、有機ELディスプレーに不可欠な高性能水分除去シート「水分ゲッター」を
開発し、サンプルの出荷を開始した。概要は以下のとおりです。

1. 有機ELディスプレー

有機ELディスプレーは、従来の液晶ディスプレーに比べて以下のような特徴を有し、次世代のディスプレーとして期待
されている。
@ バックライトが不要であり、低消費電力化が実現。
A 部品点数も少なく、薄型・軽量化が可能。
B 明るく高精細な画像表示。
C 広い視野角。
D 応答速度が速く、高速動画の再生が可能。

2. 有機ELディスプレーに不可欠な水分ゲッター

有機ELディスプレーは陽極層の上に有機発光層、陰極層を積層した構造(添付図参照)になっているが、画像コントロ
ールの重要部分である陰極層が酸化腐食すると部分断接が発生し、画像が欠落してしまい、やがて全体が発光しな
くなってしまう欠点がある。この酸化現象は極わずかな水分によって起こり、有機ELディスプレーの寿命を大きく左右
する。そのため、ディスプレーは密閉構造になっており、主にエポキシ系樹脂で封止している。しかし、この封止材を
通ってどうしても水分が浸入する。構造内部の水分含有レベルはほぼ絶乾状態が要求され、現在の技術ではこれを
完璧に防ぐことは不可能である。そこで、密閉構造の内部には水分除去材(水分ゲッター)が装添されている。
2002年には、各社から画像が高精細でフルカラーの有機ELディスプレーを携帯電話やモバイルに使用されることが
企画されているが、この水分除去という大きな問題を抱えている。よって、これには薄い形状で且つ高性能な水分
ゲッター材が不可欠となっている。

有機ELディスプレーの構造

有機ELディスプレー用写真
有機ELディスプレー用
水分ゲッターシート
(リールタイプ)

3. 当社開発の水分ゲッターの特徴

現在、使用されている水分ゲッター剤は酸化バリウムの粉末であり、これは、特性は良いがクリーンルーム内で粉末
を扱うのは困難であり、且つ粉末なので閉じ込めるケース構造と多孔質フィルムで保護する必要がある。これらは有
機ELディスプレーの厚みを薄くすること及びコスト低減に大きな支障になっている。また、酸化バリウムは劇毒物に指
定されている化学物質なので環境保全に逆行し、グリーン調達を目指すメーカーとしては使用が困難である。
これに対し、ダイニック(株)では、酸化バリウムよりも水分除去能力の優れた環境汚染に心配のない、特殊な酸化カ
ルシウムを開発した。一般に使用されている酸化カルシウムの百倍以上の水分除去能力をもつ。これは、酸化カルシ
ウムの特異な結晶構造に起因し、これに多孔質フッ素樹脂を複合させて、特性を落とすことなくシート状にする事に成
功した。(世界各国に特許出願済み) また、シート片面に粘着層を設けることによって、クリーンルーム内の製造ライン
で自動装添がより容易になり、有機ELディスプレーをより薄くすることも可能になる。(基準厚み0.2〜0.5mm)。
ダイニックではすでに滋賀事業所に生産ラインを完成させた。よって、有機ELディスプレー内に侵入する水分をほぼ
完全に除去し続ける能力を持った、水分ゲッターシートの供給体制を確立した。ダイニックの水分ゲッターシートは、
すでに先行している有機ELディスプレーメーカーにサンプル供給し(リールタイプの製品:別紙写真)、その性能及び
形状について高い評価を得ており、有機ELディスプレーの寿命のカギを握る材料として必ず貢献する物である。

4.有機ELディスプレーの市場規模

有機ELディスプレーは2005年には2000〜3000億円市場に成長すると予想されている。
ダイニックでは、2002年度には売上高1億円、2003年度5億円、2005年度には20億円見込み、将来、有機EL
ディスプレーの本格拡大に合わせ、この分野の売上高を50億円規模の事業に引き上げる計画。

お問い合わせ: ダイニック株式会社
  ■商品技術研究所 理事 川口洋平
 TEL : 06−6202−6621
 E-mail : ykawaguchi@dynic.co.jp
■情報関連営業部 部長 市川仁司
 TEL : 03−5402−3137
 E-mail : film@dynic.co.jp