平成15年4月4日

1.はじめに

有機ELディスプレイ(OELD)は、次世代フラットパネルディスプレイとして注目されている。しかし、成膜された有機発光層や陰極は湿気に極めて弱く、浸入してくる水分によってダークスポット(黒点欠陥)が発生して輝度低下を促進させる。水分の他にも、パネルの封止材のアウトガス等が悪影響を及ぼすこともある。これらによるダークスポット成長を抑制することはOELDの「長寿命化」にとって必要な技術である。
現在、各社から画像が高精細でフルカラーの有機ELディスプレーを携帯電話やモバイルに使用されることが企画されているが、この水分除去という大きな問題を抱えている。よって、これには薄い形状で且つ高性能な水分ゲッター材が不可欠となっている。

2.当社開発の水分ゲッターの特徴

現在、使用されている水分ゲッター剤は酸化バリウムの粉末であり、これは、性能は良いがクリーンルーム内で粉末を扱うのは困難であり、且つ粉末なので閉じ込めるケース構造と多孔質フィルムで保護する必要がある。これらは有機ELディスプレーの厚みを薄くすること及びコスト低減に大きな支障になっている。また、酸化バリウムは劇毒物に指定されている化学物質なので環境保全に逆行し、グリーン調達を目指すメーカーとしては使用が困難である。
これに対し、ダイニック(株)では、酸化バリウムよりも水分除去能力の優れた環境汚染に心配のない、特殊な酸化カルシウムを開発した。一般に使用されている酸化カルシウムの百倍以上の水分除去能力をもつ。これは、酸化カルシウムの特異な結晶構造に起因し、これに多孔質フッ素樹脂を複合させて、特性を落とすことなくシート状にする事に成功した。(世界各国に特許出願済み) また、シート片面に粘着層を設けることによって、クリーンルーム内の製造ラインで自動装添がより容易になり、有機ELディスプレーをより薄くすることも可能になる。
ダイニックではすでに滋賀事業所に生産ラインを完成させ、有機ELディスプレー内に侵入する水分をほぼ完全に除去し続ける能力を持った、水分ゲッターシートの供給体制を確立した。ダイニックの水分ゲッターシートは、すでに先行している有機ELディスプレーメーカーにサンプル供給し(リールタイプの製品:別紙写真)、その性能及び形状について高い評価を得ている。

3.有機ELディスプレーの市場規模

有機ELディスプレーは2005年には2000〜3000億円市場に成長すると予想されているが、各社の有機ELディスプレー開発が当初予測に対して遅れ気味であり、ダイニックの2003年3月度売上高は2000万円にとどまった。2004年3月度2億円、2005年度には5億円を見込む計画。
4.特徴
  • 鋭敏な吸湿性を有し、微量の水分を速やかに吸着固定化して再放出しません。
  • 水分以外で排除したいアウトガス(不純ガス成分)に対しても吸着除去が可能です。
  • シートの片面に粘着加工が施されているため、封止缶への装着が簡単です。また、リールで供給できるため使い勝手が良く、設備内への持込が容易で場所をとりません
  • 薄くて柔軟なシート状のため、製品の小型化に寄与します。吸湿によって内部の吸湿材が脱落することはありません。
  • 主原料が酸化カルシウムであり、劇物ではないので安全性に優れ、環境負荷を軽減します
5.製品形態

  ☆製品仕様

・厚さ :180〜300μm(粘着材込)
・巾  :約10mm〜約40mm        
・サイズ:10×10〜70×40mm
☆包装

・アルミ包材の2重包装で窒素ガス封入。
6.吸湿性能

  @ 吸湿重量増加

*20℃-65%RHの雰囲気下における、 吸湿性能のデータ例を以下に示します。

・試料    :HD‐S05
・初期重量  :120r
・吸湿シートサイズ :3.5cu×250μm
A 低露点下での吸湿による重量増加

*露点が一定の空間内に試料を設置し、試料の重量増加を測定します。下記グラフは露点の異なる空間で測定したデータ(3点)をまとめたものになっています。

・試料    :HD‐S05
・雰囲気温度 :60℃
・吸湿シートサイズ :3.5cu×250μm
 

〔リールタイプの製品例〕
お問い合わせ: ダイニック株式会社
  第2事業部 情報関連営業部第1課
TEL.03−5402−3137  
FAX.03−5402−3148